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2006年06月27日 [15:35] ジャミル探求記(小説?) 

ジャミル探求記 第7話  クジャラートの闇 前編:悲しき暗殺者

ドラマ『医龍』の挿入歌が気になる今日この頃……

コンニチハ、Masです。
 
 
 
ほぼ4週間ぶり……(´▽`;A)




~ 義賊ジャミルの探求記 ~


~ 第7話 クジャラートの闇 前編:悲しき暗殺者 ~




 魔の島で『魔のエメラルド』を手に入れたおれ達は、エスタミルに向かっていた。
 え? 何故エスタミルに向かうのか、って?
 まぁ、色々と理由はあるんだが、おれの我儘……ってのが一番かな? ディステニィストーンを手に入れた事と、おれの旅がまだ続く事を幼馴染達に報告しに行く為だ。
 おれの名はジャミル。エスタミルの下町で生まれ、下町で育ち、そして下町で盗賊を生業として生活していた、何処にでも居る平凡な奴さ。
 だが、そんなおれ――こそ泥たるおれが、“サルーインと戦う運命の戦士”って奴の一人、って事らしい。何の因果かは分から無ぇし、運命って奴に従うのも癪だが、「おれ達がサルーインを倒さない限り、世界が滅んでしまう」って言われちまったら、「しょうがねぇ、やってやるぜ」ってなるよな。
 サルーインと戦う為に必要な物、それが、全部で十個あると言われる“力ある石”、『ディステニィストーン』だった。十個の内、『土のトパーズ』、『幻のアメジスト』、そして『魔のエメラルド』の三つが既におれ達の手元にある。これからおれ達は、残りの『石』と、それを使うべき“運命の戦士”を探す旅に出なければ成らなかった。
 そんな訳で、一旦故郷に戻って来たんだが……さて、どうしたものかな。
「おれはサルーインと戦う運命の戦士なんだぜ」
 なんて、まともに言えば、きっと笑われるだろうしなぁ……
 おれの葛藤なんてドコ吹く風で、船はエスタミルへと進む。魔の島に行く時とは雲泥の差で、静かで穏やかな船旅だった。
 あ、そうそう、魔の島――って言えば……。島へ行く前に一旦離れていたアルベルトとダークの二人なんだが、おれ達がヨービルに暫く滞在している時に、また合流する事が出来た。やけにあっさりと合流出来たんだが、これも“運命”とやらなのかねぇ。
 そうこう考えている間に、船は懐かしのエスタミルへと近づいて来た。長い旅から帰って来るのはこれで三度目だが、やっぱり故郷は落ち着く。
 この時、おれはまだ、この先に待ち受ける運命を知らずに居た……

「お前、ジャミルだな?」
 船を降りて懐かしの街並みを歩いていると、突然見知らぬ男から声を掛けられた。
「あ? 何の事だ?」
 おれは人違いを装い、しらばっくれる。下手に「そうだ」なんて言うと、何されるか分かったもんじゃ無い。この南エスタミルでは特に、な。
「ギルドに属していない、“はみ出し者”のジャミル。お前がそうだと言う事は分かっている」
 ……地元でしらばっくれるのが、そもそも間違いだったか。
「おれがそのジャミルだとして、一体何の用だい?」
 開き直って、逆に男に訊き返す。
「……マスターがお呼びだ。付いて来てもらおう」
「マスターがねぇ。それじゃあ、行くしか無さそうだな」
 おれは男の言葉に素直に従う事にした。“マスター”とは、このエスタミルを裏で支配する“盗賊ギルド”の“ギルドマスター”の事。“盗賊ギルド”とは、その名の通り盗賊達の集まりみたいな組織だ。このギルドに所属していれば、イザという時にギルドが後ろ盾になってくれるので、エスタミル周辺で盗賊稼業をやっている者は、七割から八割がギルドに所属している。つまり“ギルドマスター”は、それ等の盗賊達の元締めと言う事だ。
 あぁ、ちなみに……おれとダウドはギルドには属していない。ギルドは後ろ盾にはなってくれるが、それこそタダと言う訳じゃあ無い。毎月ある程度の上納金を納めなければ、ギルドの恩恵には与れない様になっている。まぁ、この辺りは「ギブ・アンド・テイク」って奴だな。おれ達がギルドに属さない理由は正にココだ。つまり、“何事も無ければ、ギルドの後ろ盾に頼る必要は無い”、ってのがおれのモットーなんでね。……いや、本音を言うと、“上納金を毎月持っていかれるのが嫌”なんだけどな。
 “盗賊ギルドがエスタミルを裏で支配する”と言うのは、誇張でも嘘でも無い、正真正銘の事実だ。クジャラートのリーである、あのウハンジのオッサンでさえ、表向きは兎も角、実際問題では盗賊ギルドを無視する事は出来ない。だから、ギルドに属していないとは言え、マスターが呼んでいるとあれば、おれ如き一介のコソ泥が無視する訳には行かないんだよな、これが。

 南北のエスタミルを繋ぐ地下水路。そこを地下へ地下へと降りて行き、巧妙に隠された通路の奥に盗賊ギルドの本拠地はあった。男の後に付いて行きギルドに通されたおれは、薄い布が張られた薄暗い部屋へと通された。呼び出されたのはおれ――つまりは、“おれ一人”。一人だけで会う方が良いと判断し、アルベルト達には先に宿で待ってもらう事になっていた。目の前にある薄布の向こうには、人間らしき影がおぼろげながら見える。この影の人物こそ、エスタミルの裏の支配者、“盗賊ギルドのマスター”だった。
「よく来たな」
 マスターは、不思議な響きを持つ声色で、おれに話し掛ける。この声だけじゃあマスターが男なのか女なのかは判断が付かない。この声が、姿を見せないマスターの正体を、更に巧妙に隠していた。
「マスターが直々におれに話ってのは何だい?」
 おれは不遜とも言える態度でそれに応じる。周りの奴等がざわめくが、おれは平然とした態度で居た。
「アサシンギルド。この名前を聞いた事はあるか?」
「名前だけ、くらい……かな」
 おれは正直に答える。薄布の向こうで、マスターが頷いた様な気がした。
「かつて、クジャラート人が小さな部族に分かれて争っていた頃、裏の世界で影の支配者だったのがアサシンギルドだ。奴等はその名が示す通り暗殺者の集団で、力と恐怖でクジャラートの人々を支配していた。アサシンギルドの名が出るだけで人々は震え上がる程だった。そう、人々は知っていたんだ。自分達の真の支配者がアサシンギルドだと言う事を。
 だが、その支配も遂に終わりを迎える事になった。長き争乱の末、クジャラートが一つの国に統一された時、クジャラートの人々は手を携え、アサシンギルドを壊滅に追い込んだ。……もう三百年も前の事だ」
 そこまで話すと、マスターは話を一旦止め、深い溜息を吐いた。
「アサシンギルドは確かに一度滅んだ。だが、今になって奴等が復活したんだ。タルミッタとここエスタミルで、既に奴等の手によって要人が三人も殺された。奴等は裏の世界も表の世界も人殺しで仕切るつもりだ。盗賊ギルドの面子の為にも、そしてクジャラートの為にも、そんな事は断じて許す訳には行かない! だが――」
 マスターは再び溜息を吐いた。
「情け無いが、力不足、と言うのが今の俺達の現状だ。現状を打破する為には、助っ人が必要だ。それも腕の立つ助っ人がな……」
 ――そう言う事ね……
 おれは心の中でそう呟く。
「そんな時だ。ジャミル、お前の事が俺達の耳に入ったのは。ギルドに属さず、腕も立つ、更にはウハンジまでもを手玉に取ったお前の事が、な。お前の腕を見込んで頼む、アサシンギルドを倒すのに協力してくれ」
 マスターの話をもう一度頭の中で整理し、おれは考え込んだ。
 正直な話、既に答えは決まっていたんだが、おれは即答を避けていた。何故なら、この場でのおれとギルドの関係は上下では無い。あくまで等しい立場での交渉なんだ。“駆け引き”ってのが重要になって来る。エスタミルの危機に何を、とでも思うかも知れないが、この駆け引きは、おれの――いや、おれ達のこれからにも左右する重要な事柄だった。
 少し考えた後、おれは逆にマスターに対して逆に訊ねた。
「まぁ、話は良く分かった。で、おれに対する見返りは何だ?」
 これはあくまで“依頼”。そういう形にしておかなければならない。「ちゃんとした見返りが無ければ、こちらは協力しないぞ」と言う意思表示は明確にしておく必要があった。
「ファラ……と言ったか?」
 マスターのその言葉に、おれの身体がビクリと反応する。
 ――しまった!
 あからさまに動揺を表に出してしまった。だが、過ぎた事は仕方が無い。
 ――こいつ等、ファラをどうするつもりだ?
 おれは今まで抑えていた気配を解放し、マスターに対し殺意のこもった視線を送る。
「おいおい、勘違いするな。あの娘を人質になんてしたら、こちらがお前に滅ぼされてしまうじゃ無ぇか。俺達がお前に提示する見返り報酬は、あの母娘の身の保障だ。どうだ、悪くない取引だと思うがな」
 ――確かに悪くは無い。それどころかギルドが後ろ盾になれば、ウハンジもおいそれとは手を――あ、ウハンジも生活の保障をしてくれているんだっけか? 表のウハンジに裏の盗賊ギルド。そうなればファラはこのエスタミルで平穏な生活が約束される。駆け引きはもう必要無かった。
「悪く無ぇ」
 そして、おれは高らかにこう答える。
「その依頼、引き受けるぜ」

 地下水路から街へ出ると、外はもう夜だった。
 銀のエリスの月が姿を現し、英雄ミルザとその仲間達が天に昇った時の証とされる「正義十字の五つ星」が天頂付近で輝いている。初夏のこの時期に「正義十字」が天頂にあると言う事は、時刻はもう深夜と言う事だ。
 ――すっかり遅くなっちまったな……
 ここからアルベルト達が居るであろう宿屋へはかなりの距離がある。そして、おれとダウドのねぐらは、ここからは目と鼻の先だ。
 ――今日の所は、こっちにするか。
 おれは宿屋へは行かず、ねぐらの方で一晩を過ごす事に決めた。ダウドの奴と久しぶりに一晩話し込むのも悪くは無い。
「誰も居ない……?」
 ねぐらの扉を開けると、中からは人の気配が全く無かった。
 壁の蝋燭に火を灯すと、薄明かりがねぐらの中を照らす。おれがアイシャと共にエスタミルを出て行った頃と何も変わらない姿が浮かび上がった。
「何だよ、ダウドの奴、出掛けているのか」
 おれはそう呟きながら、昔自分が寝ていた場所で寝転ぶ。まだ、おれの分の毛布なんかがそのままになっているのが、無性に嬉しかった。このねぐらが“俺の家”――つまり、“帰る場所”がある、って事が実感出来る。この“帰る場所”があると言うのがどれだけ幸せな事なのかを、おれは旅を通じて痛感した。
 ――この場所を守る為に、おれはアサシンギルドと戦う。
 そう決意する中、おれの意識はいつしか夢の世界へと落ちていった……

「死ね!」
 チリチリする程の殺気、そして、裂帛の気合のこもった声で、おれは目を覚ました。自分の状況を判断する間も無く、己のカンを頼りに身体を転がす。
 ガッ!
 直後、おれの首が元あった場所に、小さなナイフが突き立てられた。ナイフは、月明かりを反射し、凶々しく輝いている。
「チィッ!」
 悔しそうに舌打ちをする声が聞こえた。おれは注意深く、だが素早くナイフから声の方向へと視線を移す。月明かりの中、おぼろげに浮かび上がっていたのは、全身黒ずくめの奇妙な仮面を被った奴だった。
 ――暗殺者か?!
 黒ずくめは一旦後ろに飛び退いて、おれとの間合いを外した。おれも腰に手を伸ばし、常時携帯している小剣を抜こうとする。だが――
 ――無い?!
 そこにある筈の小剣が無かった。良く見ると黒ずくめの左手に小剣が握られている。ウェイ=クビンを出し抜いたおれが気付かない程の早業だった。
 黒ずくめは左手の小剣を逆手に持ち替え、それを胸の前に構えて右手を柄尻に添える。そして、一直線におれに向かって来た。
 ガッッ!
 おれと黒ずくめの身体が重なる。間一髪、黒ずくめの突進を両腕で抑え、小剣は眉間の寸前で止まっていた。だが、相変わらずピンチは続いている。ここで力負けすれば、小剣は簡単におれに眉間にもぐりこんでしまう。ならば!
 おれは一瞬、全身の力を抜いた。今まで拮抗していた力の均衡が破れ、黒ずくめがおれに覆いかぶさる様な格好になる。
「?!」
 黒ずくめの動揺が両腕から伝わって来た。
 ――今だ!
 おれは倒れる数瞬の間に、黒ずくめを掴んだ腕を翻す。
 ドッ!!
 直後、おれと黒ずくめの身体が、重なるようにして倒れた。
 ……やがて、おれは自分の上に覆い被さる様に倒れた黒ずくめを横に除け、立ち上がる。
「ちょいと……やばかったか……」
 身体に付いた埃を落としながら、おれは振り向いた。振り向いた先には、横に除けた際に仰向けになった黒ずくめの身体がある。その胸にはおれの小剣が突き刺さっていた。視線をずらし、正体を隠している仮面の方へ向ける。だが、倒れた拍子にずり落ちたのか、そこに仮面は無く、黒ずくめの暗殺者の顔が露わになっていた。
「ダウ、ド……?」
 仮面の無い、黒ずくめの顔。それは、おれの幼馴染みであり、こそ泥時代の相棒であり、そして一番の親友たるダウドの顔だった。おれは仰向けに倒れているダウドの傍へ行き、上体を起こす。
「ダウド、どうしてお前が……」
 何が何だか、さっぱり分からなかった。今、おれは黒ずくめに殺されそうになって、おれはその黒ずくめを返り討ちにして、だけどその黒ずくめの正体はダウドで……
「……ギルド、ばんざい……」
 ゴボッ!
 ダウドが口から血を吐いた。血を吐くと言う事は、内臓が傷ついている証拠。当然だ、おれがダウドの胸――左肺にあたる部分に小剣を突き立てたんだ。あれが致命傷だと言うのは感覚で分かっている。
「痛い……」
 その言葉を聞いて、ハッと我に返り、おれはダウドの顔へと視線を向けた。そばかすだらけの顔、柔らかそうな癖っ毛、人懐っこい瞳……そのダウドの瞳からは、休息に光が失われて行く。
「……痛いよ……死にたく、ないよ……」
 光が失われて行くダウドの瞳から涙が溢れていた。そして、その瞳がゆっくりと閉じられて行く。
「ダウド、しっかりしろ、ダウド。目を開けろ!」
 おれはダウドの手を握り、身体を必死で揺さぶった。そうする事で、ダウドが再び目を開ける事を望みながら。
 果たして、望みは叶った。ダウドは薄く目を開ける。だが、その瞳の焦点が合う事は無かった。
「……タルミッタの……西に……」
 微かな、本当に微かな呟きが聞こえる。おれはダウドの言葉を聞き逃すまいと耳を口元近づけた。
「……ジャミル……」
「何だ、ダウド。おれはここに居るぜ」
 おれを呼ぶ声に、手をきつく握り返しておれは答える。その手が僅かに握り返された。
「……ジャミル……ごめんよ……」
 握り返された手が、するりと落ちて行く。瞳が再び閉じられて――腕の中のダウドの身体が、急に重くなった様に感じた。
「ダウド……?」
 おれの中で、様々な記憶が蘇る。初めて会った時の事、ファラと三人の幼き日々、二人で最初に盗みをした事、ファラに対する想いを打ち明けた事、それを二人だけの秘密にした事、おれとダウドと――
 おれの傍にはいつもダウドとファラが居た。おれやファラと居る時のダウドは、いつもはにかんだ様な笑みを浮かべていた。おれがエスタミルを旅立つ前は、いつもダウドは隣に居た。相棒として、そして親友として。いつも、いつも――
 そのダウドは今、目を閉じて動かない。まるで眠っているかの様だった。
 もう、ダウドの笑顔を見る事は出来ない。もう、声を聞く事も出来ない。もう、共に在る事さえも。もう――
「ダウド、目を覚ませ、ダウド。返事をしろ、ダウド!」
 おれはダウドの亡骸に顔を埋め、思いっきり泣き叫んだ。ダウドの名を何度も、何度も呼ぶ。いつもの様に返事をする事を願って。
「ダウド、死ぬな、ダウドーーーっ!」

 だが、おれの願いが再び叶う事は無かった……


~ 続く ~



■次回予告!!

ダウドは、死んだ……。おれが、殺した……。
自ら親友を殺した悲しみ、アサシンギルドへの強い憎しみと怒りに呼応するかの様に『魔のエメラルド』は妖しく輝く。
その輝きは、ジャミルに新たなる“力”をもたらすのだった。
次回~ 義賊ジャミルの探求記 ~
~ 第8話 クジャラートの闇 中編:『魔』の暗き力 ~
「許さねぇ……絶対に、許さねぇぞ……!」



……後で修正するかも……(´▽`;A)



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