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2006年06月29日 [16:25] ジャミル探求記(小説?) 

ジャミル探求記 第8話  クジャラートの闇 中編:『魔』の暗き力

家の網戸の補修をやっていて、『医龍』の再放送を1話分見逃しました。

コンニチハ、Masです。
 
 
 
中一日……




~ 義賊ジャミルの探求記 ~


~ 第8話 クジャラートの闇 中編:『魔』の暗き力 ~




 ――何故だ……
 ――何故、こんな事になった……?
 ――もう、お前の声を聞くことは出来ない……
 ――もう、お前の笑顔を見る事も出来ない……
 ――そう、お前はもう、居ない……
 ――許さない、絶対に、許さない……
 ――おれは、お前達を、許さない……
「許さねぇ……絶対に、許さねぇぞ……!」
 ダウドの遺体を抱きながら、おれは一人呟いていた。
 何度も……何度も……
 ……おれの名はジャミル。おれは……おれは、親友を殺した、人殺しだ……

「あ……。朝、か……」
 あれからどれくらいの時間が経ったのだろう? 気が付くと、おれとダウドのねぐらに朝日の光が差し込んで来た。薄闇に包まれていたねぐらを日の光が照らす。
 おれのすぐ傍には、ダウドの顔があった。朝日の光に照らされたダウドの顔は、かすかに微笑んで、まるで幸せそうに眠っているかの様だ。目尻に薄っすらと涙の跡があり、おれはそれを拭う。
 ――っ?!!
 おれの指がダウドの顔に触れた時、ダウドの肌は人間の身体とは思えない程冷たくなっていた。その冷たさが、“ダウドの死”と言う事実を突きつける。
 ――あ……?!
 その事実を認識した時、おれの頬を一筋の涙が伝え落ちた。
 おれは、ダウドの身体を抱きしめる。まるで、温もりを求めるかの様に……
 だが、ダウドの身体から伝わるのは、死の冷たさだけだった……

 それから、おれは一人でダウドを街外れの丘に埋葬した。
 ダウドをここまで連れて来て、穴を掘り、その穴の中にダウドの亡骸を横たえ、土を被せ、墓標を建てる。それをおれ一人ですべてやった。他の誰にもさせたくは無かったんだ。
 すべてが終った時、日は既にかなり傾いて、夕日が街を紅く染めていた。
 ここから見えるこの景色が、ダウドは好きだった。紅く染まるエスタミルが綺麗で、幼い頃からおれとファラと三人で、夕暮れ時になると良くここに来ていた。だから、ここにダウドを埋めたんだ。
「ここなら……良いよな、ダウド」
 二本の木の枝を十字に組み合わせた簡素な墓標を前に、おれはそう呟く。
「ここから、エスタミルを……そして、ファラを見守ってやってくれよな」
 おれは、墓標に手を乗せた。ダウドの肩に手を乗せる様に……
「頼むぜ、ダウド……」
 涙が……こみ上げてくる。墓標に向かって話し掛ける事が、こんなにも辛く、悲しく、そして、苦しいものだと、おれは……この時、初めて知った。
 その苦しみは、胸の痛み――怒りや憎しみ――を伴う。
 そして、その怒りや憎しみといった負の感情が増大した時、おれの中に新たなる“力”が目覚めていた。
 額のサークレットの『エメラルド』。それが、負の感情の増大と共に、おれに“力”を与えてくれているのを感じる。『魔』の“力”――“魔術”の“力”を……

 おれがダウドの亡骸を埋葬して、再びエスタミルへ戻って来た時は、既に日は暮れていた。
 これから、ファラにダウドの事を伝えなければならない。
 ファラは、泣くだろう……そう思うと、おれの胸は悲しみで痛み、いっそ旅に出た事にでもしようか、などと考えてしまう。
 だが、嘘はすぐにばれる。そうなると、ファラは嘘を吐いたおれを許さないだろう。
 ――やっぱり、本当の事を言おう……
 そう決めて、おれはファラの家の扉を開けた。
「あっ、ジャミル! どこ行っていたの、探してたんだよ!」
 そう言って向けられるファラの笑顔が、何故か辛い。おれはぎこちなく笑みを作った。
 ――ん? 探していた?
「昼頃かな? アイシャ達がやって来て、「ジャミル知らない?」だって」
 ――あ……そう言えば、あいつ等にもまだ何も言ってないっけか……
 ダウドの一件で他に頭が回っていない事に、おれは苦笑をもらす。
「……ジャミル、どうしたの? 元気無いじゃない」
「……そう見えるか?」
「見えるも何も……どうしたの?」
 ファラの前ではいつも明るく振舞っていたおれが「元気無い」って言われちまったか……今のおれは、よっぽど酷い面してるんだな。それだけ心が追い詰められている、って事なのか……
「ファラ……話しておきたい事がある……」
 おれは神妙な面持ちでファラの顔を見る。
「え? 何?」
「実は……」
 おれがそう言ってファラに話を切り出した時だった。
 バタン!
 家の入り口の扉が開き、ファラの母親が現れた。そして右手に小刀を持ち、おれに斬り掛かって来る。
「死ね!」
 ――あ……
 おれは軽い既視感を感じた。これじゃあまるで……昨夜のダウドと同じじゃ無いか。
「かあちゃん、止めとくれよ!」
「止めてくれ、おばさん!」
 おれとファラが声を張り上げ、必死で説得するが、おばさんは聞く耳を持たない。そうこうしている間に、おばさんの攻撃は苛烈さを増して行った。
 ――止まらないか……くそっ、仕方無ぇ!
 小刀の猛攻をかい潜ったおれは、おばさんに軽く体当たりする。武術の心得の無いおばさんは、それだけで盛大によろけた。そこをすかさず背後に回り、側頭部の辺りに手をかざし、意識を集中させる。
「うっ……!」
 小さなうめきを洩らし、おばさんは気を失って倒れた。
「かあちゃん!」
「大丈夫、軽い脳震盪を起こして気絶させただけだ。じきに目を覚ますさ」
 おばさんに駆け寄ったファラに、おれはそう言って安心させる。
「でも……どうしたってんだ? イキナリ……」
 おれの問いにファラは「分からない」と首を振った。
「タルミッタの西の方で仕事が出来た、って言ってかあちゃんはダウドと一緒に出掛けたんだ。二人共、ずっと帰って来なくて、それが……帰って来たと思ったらこんな……」
 ――タルミッタの西……だと? ダウドも一緒に?
 それでおれは確信する。タルミッタの西――その場所は、事切れる寸前にダウドが告げた場所だった。
 ――ダウドだけじゃ無く、おばさんにまで手を出してやがったか!
 おれの中に再び怒りと憎しみの感情――負の感情――が膨れ上がった。それに呼応するかの様に、額の『魔のエメラルド』から“力”がおれに流れ込んで来る。それに心地好さを感じている事を、おれは自覚していた。
 おれは自分の掌をまじまじと見る。先程、おばさんを気絶させる際、まるで呼吸をするかの如く、自然に“術”を使っていた。今まで“術”と言うモノが何一つ使えなかったおれが、今では物を持つが如く簡単に術を扱える。“魔”の術法、“魔術”を。これは、『魔のエメラルド』の恩恵に違いなかった。
 “魔術”――確かにこの“力は、人を虜にさせるに十分な魅力を持っている。道具を使う事無く、更には遠くの間合いから様々な事象を具現する事が出来るからだ。しかも、『魔のエメラルド』は、サークレットを額に着けているだけで、おれの意思に反応して、恐らくは無限とも言える魔力を供給してくれる。
 ――なるほど……確かに魅力的な力だ……それに、気分が良い……
 今なら分かる。ウェイ=クビンが“不老不死”などと言う力を求めたのが。この魅力的な“力”の虜になったクビンは、更なる“力”を求めた。その切欠になった“力”を、おれは今手に入れている。
 おれは新たに手に入れた“力”に歓喜し、この“力”を使ってどうやってダウドの復讐を果たそうか、と色々思案を廻らせた。
「ジャミル……」
 ファラが心配そうな、いや、何か怯えた様な表情でこちらを見ている。
「大丈夫だって、ファラ」
 おれはファラを安心させようと大袈裟に言うが、違う、と言いた気にファラは首を横に振った。
「ジャミル……何だか……怖い……。何で、そんな風に笑うの?」
「え?」
 そう言われ、おれは近くにあった鏡を見る。そこに居たのは、まるで獲物を値踏みするかの様に舌なめずりをしているおれの姿だった。
「それに、ダウドは? かあちゃんがこうなっているんなら、一緒に行ったダウドはどうなの?」
「あ……。違う、違うんだファラ……」
 おれはファラの問いかけにまともに答える事も出来ず、無意識の内にファラから離れ、入り口の方へと後ずさりして行く。
「違う、って何? 何かあったの? ダウドは?」
「悪い、ファラ……」
「悪い、って……何? ねぇ、ジャミル、答えてよ!」
 おれの手が入り口の扉に触れた。ファラは、涙を浮かべ、責める様な瞳でおれを見ている。
「悪い……」
 おれはそれだけを言うと、ファラの家から逃げる様に立ち去った。
「ジャミル!!」
 ファラの声が聞こえる。
 エスタミルの路地を、おれは走った。ただ、逃げるように、がむしゃらに。
 結局、ファラにダウドの事は話せなかった。話す事が出来なかった。
 ――悪い、ダウド……。悪い、ファラ……
 走りながら、おれは二人に謝っていた。

 おれは、南エスタミルの路地を走っていた。先程までは、ただがむしゃらに走っていただけだったが、今は違う。目的の場所はPUB。そこに居るある人物に用があった。
 PUBの入り口の扉を開けると、まだ日が沈んでいないからか、客は全く居なかった。だが、カウンターの中ではここのPUBの女主人が、一人でグラスを磨いている。
「まだ開いてないよ……」
 グラスを磨く手もそのままに、女主人がこちらを振り向きもせずに言う。その言い草は、何所か気だるげだ。おれは、もう一度PUBの中を見回す。
 そして、PUBの中には、おれと女主人しか居ない事を再確認し、カウンターに座って話を切り出した。
「……話がある……」
「……何だい? 店はまだ始まっていないよ。それに……アンタは今、ギルドから仕事の依頼を受けているんじゃ、無いのかい?」
「……流石にココの裏の仕事を斡旋しているだけあるな。話を耳にするのが早いじゃ無いか。……と、言いたいトコだけどな……」
「……何のつもりだい?」
 おれの右手にはレイピアが握られ、その切っ先を女主人の喉元に向けていた。女主人はそれを見ても顔色一つ変えずに応答する。
「へぇ……これしきの事じゃ顔色一つ変えない、ってか? 伊達に盗賊ギルドのギルドマスターをやっている訳じゃあ無さそうだな」
 そう、このPUBの女主人こそ、エスタミルの裏の支配者、“盗賊ギルドのギルドマスター”の表の顔だった。
「……」
 おれのこの言葉を聞いても、女主人の表情に変化は見られない。何時もの気だるげな表情のままだ。この辺りは流石、と言うべきだろう。常人であれば、ここで「もしかして間違っているんじゃ無いか?」と自身を無くしてしまい、女主人のペースに巻き込まれてしまうかも知れない。
 だが、おれは、この女主人がギルドマスターである事に確信を持っていた。何故、と聞かれても明確には答えられない。あえて言うなら“おれの盗賊としてのカン”って奴だな。
「……まぁ、良い。ちょっと頼みたい事があるんだけどよ。それも、早急に、だ」
 おれは正体を明かさない女主人に対し、話を続ける。もちろん、レイピアの切っ先は喉元に突きつけたままだ。
「……タルミッタの西……」
「?」
 女主人の表情が、おれの呟きを聞いて初めて変わった。怪訝なもののそれに。
「おれの相棒が、今の際にくれた情報だ。多分、アサシンギルドの何らかの手掛かりがこの辺りにある。盗賊ギルドの力で、それを突き止めてくれ。出来れば所在が分かると有難いんだがな。場所さえ分かれば、おれが乗り込んでやる! だから――」
 おれはレイピアを下ろした。
「だから、頼む。ギルドの事を……」
 声が震えている事を自覚する。気が付けば、女主人におれは必死で懇願していた。
「……分かった」
 おれはハッとして、女主人の顔をまじまじと見る。そこには何所か気だるげな雰囲気は消え、盗賊ギルドのマスターとしての威圧感があった。
「タルミッタの西――だな。その辺りを重点的に調べさせよう。三日……いや、二日待て!」
「……ありがとよ。二日、だな。待ってるぜ」
 おれは踵を返し、PUBを出ようとする。それを背後から呼び止められた。まだ何かあるのか、とおれは振り向く。
「まぁ待ちなよ……どうせだから、一杯飲んでいく?」
 ギルドマスター――いや、女主人は、気だるげにそう言った。

 それから、おれはファラやアイシャ達と合流し、ダウドの死とギルドからの依頼を告げた。
 ダウドの死はこいつ等に隠し通せるものでも無く、また、その理由を聞かれたら真実を言う他が無かった。
 話を聞くと、ファラとアイシャは泣き、アルベルトとバーバラはアサシンギルドに対する怒りを露わにした。ダークは何か考え込んでいる様だった。何かを思い出したのかも知れない。
 反応はそれぞれだったが、「アサシンギルドは許せない」という事に関しては、皆の意見は一つだった。
 その事が嬉しく、また、その事がおれにある決意をさせた。
 そして――
 二日後の夜、おれは一人エスタミルを旅立った。
 タルミッタの西――そこを目指して……


~ 続く ~



■次回予告!!

タルミッタの西……
ダウドの言葉、そしてその後の盗賊ギルドの調査でアサシンギルドの本拠地の所在を知ったジャミルは、仲間達に何も告げず、ただ一人でアサシンギルドへと乗り込む。
その姿は、“サルーインと戦う運命の戦士”では無く、ただ一人の“復讐者”であった。
次回~ 義賊ジャミルの探求記 ~
~ 第9話 クジャラートの闇 後編:ただ一人の復讐者 ~
「ダウドの奴もそう言って……そして死んだんだぜ? ……痛い、死にたく無い、ってなぁっ!」



少し前に書いた文章なもんで、今とちょっとだけ文体が違うなぁ……

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