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2006年03月20日 [17:34] イスカンダール記 

イスカンダール記:序章

いや、何つーか……ネタが無いので……( ̄∇ ̄*)>

オハヨウゴザイマス、Masです。

昔にチョット2人の方と協力して書いていた奴を猿しましたw
『U:サガ』を知らない人には、全く分からないネタです。
では、ドゾ。
 
 
 
序 章  永き時の……



 ―――『輝かしい未来』を―――


 いつからだろう……。
 もうずいぶんと長い間歩き続けて来た……。
 ただ静かに、全てを覆い尽くす無限の闇の中を……。
 この闇に『独り』彷徨い続けることが、自分に課せられた使命であるかのように……。

 ……しかし……もう疲れた。
 身体はすっかり衰えている。
 かつて、一晩でいくつもの山々を走り抜けた脚力は、もう無い。
 勇壮を誇った腕力も、今はもう無い。
 ……気が付くと、うつ伏せに倒れていた。
 その状態から立ち上がろうとするが、腕に力が入らない。
 腕力の衰えは、自分の身体さえも支える事が出来ない程に進行していた。
 ――俺はこれで良かったんだろうか?
 全身から力が抜けていくのを感じつつ、自らに問い掛ける。
 ――俺のしてきた事は正しかったんだろうか?
 そう、ずっとこうやって問い掛けて来た。
 ――なぁ、お前なら何と言ってくれる?
 虚空の闇に向かって、訊ねる。まるで、そこに誰かが居るかの様に……。
 ――何を期待しているんだ……俺は……。
 思わず苦笑した。もう何もかもがどうでも良くなってくる。
 ――いっそ……もう、このまま……。
 瞼を閉じた。意識は闇に溶け込んで――

 ――?!!
 闇の意識の中、どこか懐かしい……あまりにも懐かしい気配を感じた。
 驚いて目を開けると、果てしなく広がる闇の中で、一条の優しい光が自分の体を照らしていた。懐かしい気配はその光から発せられている。
 光に照らされていると、動けなかった身体に力が戻ってくるのを感じた。
 自然と身体が動く。立ち上がり、光の光源に向かって子供のように駆け出した。衰えていた身体は若き日のそれに戻り、ぐんぐんと走る速度を上げていく。
 走る速度が上がるにつれ光は闇を覆って行き、いつしか闇を飲み込んでいた。
 光源を背に三つの人影が現れ始める。
 それは“懐かしい”と言う言葉さえ色褪せる程、遙か昔に別れた者達。
 ――やっと……やっと、お前達の居る場所に行けるんだな。
 永き時を越えた再会に、涙が溢れてきた。
 後一歩という距離まで近付き、無意識に腕を伸ばす。
 手が影に触れる、その瞬間――
 光が、一際眩しくなった。
 思わず目を閉じ――
 再び目を開けた時には、闇を照らしていた光が消え、辺りは再び闇になっていた。
 懐かしい者達の影も、気配さえも消えていた。
 あまりの事に呆然と立ち尽くす。
 ――まだ……駄目なのか?
 再び涙が……先程とは違う涙が頬を伝う。
 ――まだ……俺はそこには行けないのか? 『独り』なのか?
 今度こそ、一緒に行けると思っていた。
 ――なぁ……答えてくれ。
 その問いに答える者は居ない……。
 『孤独』が心を支配し、意識は再び闇に――


「……ール」
「……ダール」
「イスカンダール」
 誰かが呼ぶ声が聞こえる。
「イスカンダール、大丈夫? しっかりして!」
 激しく肩を揺り動かされているのを感じ、静かに瞼を開ける。
 自分の顔を覗き込む大きな翠色の瞳が、視界に入って来た。栗色の髪の女性が、こちらを心配そうに見つめている。その顔には懐かしい面影があった。
(――か?)
 一人の人物が脳裏に浮かぶ。
「イスカンダール、大丈夫?」
 女性が再び訊いて来る。
「ん? ……あぁ、エメラルドか」
 意識は未だ夢と現実の間を揺れ動いているイスカンダールだったが、自分の名を呼ぶ女性――エメラルドの姿を確認すると、ようやく“現実の自分”を認識出来た。
 イスカンダールはベッドに寝かされていた。そう、“寝ていた”では無く“寝かされていた”である。現在のイスカンダールは歳を取り、身体はすっかり弱くなっていた。
 エメラルドは病弱なイスカンダールの世話をしてくれており、夫のアルクと共に家族の一員として接してくれている。
「どうしたの? もの凄くうなされていたみたいだけど」
 イスカンダールの額に浮かぶ汗を拭いながら、エメラルドは優しく尋ねた。
「夢を……あの夢は久しぶりに見る」
 自らが『超越者(アンリミテッド)』となり、次元を超えて混沌を監視し、この世界を見守り続ける。誰に強制されたでもないその選択肢に、イスカンダールは二千年もの間一つだけ大きな後悔の念を抱き続けてきた。
「『英雄』イスカンダールがあんなにうなされるなんてよっぽど怖い夢だったのね。どんなモンスターに襲われていたのかしら?」
 エメラルドは悪戯っぽく笑う。そのエメラルドには見えなかったが、イスカンダールの皺だらけで彫りの深い目は、僅かだが確実に湿り気を残していた。
 イスカンダールは、さり気なく目尻を擦りそれを拭う。ふと、自分の萎れたような腕が目に入った。
 『英雄』イスカンダール……そう呼ばれた時代には、どんな武器でも軽々と扱えて、逞しかった自分の腕。夢の中で戻った若かりし頃の姿を思い出すと、後悔の念は更に大きくなる。
 『独り』闇の中を歩く自分……。
 そして現れる懐かしき影……。
 その影に触れようと伸ばす自分の腕……。
 しかし届いたかと思うと、それは幻……。
 また『孤独』に戻ってしまう……。
 イスカンダールの『孤独』という後悔の念は、ふとした時にこうして押し寄せ、彼に苦悩の一日を送らせる。
「いくら英雄でも、夢の中にまで翠色の魔女の作るあの独特な味の薬を飲まされるのは、なかなか耐え難いものがあるんでな」
 イスカンダールはゆっくりと体を起こすと、エメラルドに自分の情けない姿は見せまいと、冗談めかして言った。
「あーっ、ひっど~い! いっつも苦い苦いって言ってる薬でも、こっちは一生懸命作ってるんだからね! 大体夢の中でも薬を飲まされてるなんて、体が薬を欲しがってる証拠でしょ!」
 さっきまでイスカンダールの額を拭っていたタオルを思い切りその本人の顔にぶつける。そうしてから、エメラルドはまるで悪戯っ子の様に楽しそうに微笑んだ。
「おいおい、病人に何て事をするんだ」
 そう言いながら、イスカンダールは顔にぶつけられたタオルを除ける。困り果てた顔をしながらも、エメラルドのそんな行動が、イスカンダールの孤独な心を忘れさせてくれた。昔、エメラルドの先祖にあたる女性にも、苦い薬を飲まされていた事を思い出す。
 そんな事をしていると、部屋のドアが開いて、一人の青年が入って来た。
「病人相手に賑やかな事だなぁ」
 低く、そして穏やかな声が部屋に響く。
 彼がエメラルドの夫のアルクである。
「あ、だってイスカンダールがひどいんだから」
 アルクに気付くと、エメラルドは彼に椅子を用意した。「サンキュ」と言いながら、アルクはそれに座る。
「調子は良いかい? あんまりはしゃぎ過ぎて体壊さないでくれよ」
 中世的で整った容貌に、切れ長の金色に近い茶色の瞳。一見冷たそうな印象を受けるが、イスカンダールに向けた顔は穏やかなものだった。
「あぁ、お陰さまで元気だ。エメラルドがいると、つい……な。それより子供達はどうしてる?」
「ガキ共は流石にもう寝たよ。おじいちゃんが元気になったら、またいっぱいお話してもらうって言ってたけどね」
「はは、そうか」
 自分を本当のおじいちゃんの様に懐いてくれている、アルクとエメラルドの間に生まれた双子の事を考えて、イスカンダールは笑みを浮かべる。
 外の景色に目を向けると、二つの月が夜空に浮かび、夜の闇を照らしていた。
 月に照らされていない場所の闇の濃さを見ると、夜もかなり深いのだろう。幼い子供が起きているのには辛い時間帯だ。
 二つの月――この世界を見守る『赤きエロール』と『青のラズリア』――に照らされたトーレ村の風景。雪に覆われた峰が連なる寒村の風景――その静かなる雪景色は、二千年の時を経ても何ら変わる事が無く、この村だけが時が止まったかの様だった。
「……ここは、いつまで経っても変わらないな……」
 感慨深げにそう呟く。
「……あの子達に良き未来――そう、『輝かしい未来』を与えてあげる事がこんなに嬉しいとはな……」
 心からそう思い、イスカンダールは再び笑みを浮かべた。
「どうしたの? 一人で笑ったり、呟いたり……起きてから何だか変よ?」
 先程から妙に苦笑や呟きが多いイスカンダールに対し、エメラルドが問い掛ける。
「歳を取るとな……妙に昔が懐かしくなるんだよ……」
 エメラルド達の方に向き直り、イスカンダールは答えた。
「……ボケたか?」
 パァン!
 部屋の中に、小気味よい音が響く。アルクの何気ない発言に、エメラルドが容赦無くその頭を叩いていた。
「ってぇ~! 叩くこたぁ無ぇだろ!」
「言って良い事と悪い事があるでしょ! 全く……いつまでも子供なんだから……」
 アルクの抗議は、エメラルドの言葉に押さえ込まれる。その様子が微笑ましく、イスカンダールは声を上げて笑った。
「もう。笑わないでよ」
 エメラルドがぷいっと横を向く。しかしその口元は笑いを堪えていた。
「ははは……すまんすまん。お前達を見てると、懐かしい奴等を思い出すんだ。……最も、今のアルクの役割は、私だったが、な……」
「それって……」
「そう、お前達の先祖だ」
 イスカンダールは遠い目をして呟く。
「お前達の先祖と共に旅をし、戦い、喜びも悲しみも分かち合った日々。いつかきちんと話そうと思っていた……」
 その目にはエメラルドとアルクを通して、友の姿が映っていた。若き日、共に時代を駆け抜けた二人の偉大なる魔道士……。
「……遙か昔……。そう……遠い遠い昔の……事だ……」
 想いは数千年の過去へと遡って行った――


 そして語り始める。
 遠い遠い昔――
 かつて彼が『英雄』と呼ばれていた頃を――
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