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2006年03月21日 [21:30] イスカンダール記 

イスカンダール記:第1章-1

今日は春分。
この日を境に、昼が夜より長くなる……んだが……
でも、厳密に言うと、昼と夜の時間が一緒の日じゃ無いのよねw

こんばんは、Masです。

今日も昨日と同じく、コレです。
中途半端に長く、しかもマイナーゲームネタなので、
御覧になる際はご注意ください。
 
 
 
 
 
第1章  極楽鳥花の誓い



 ――あれはもう何年前になるんだろうか……。
 幼い頃、私は今のイスカンダリアから山を二つほど越えた所にある、小さな村に暮らしていたんだ。編み物や、山での狩猟や収穫で生計を立てていた。当時は星の数ほどあった村の一つだよ。
 数百人程度の村で、村人が皆仲が良くてな。私の両親が村の外へ出掛ける間なんか、近所の家でよく世話になったもんだよ。
 そんな小さな村が、ある日、一晩のうちに全部燃えてしまったんだ。
 何もかも燃えたよ。大好きだった本や、誕生日に作ってもらった首飾り。住んでいた家、村長さんの屋敷、村の井戸、いつも遊んでいた村の巨大な木。物だけじゃない。両親も、近所の老夫婦も、友達も、全ての思い出が燃えてしまったよ。私一人を残して……全てが……。
 ……だが、全てを失ったあの日――そう、あの日から、全ては始まったんだ―――。


          1

 大陸の北東、“辺境”と呼ばれる地域の中でも更に東……。
 この辺りは、地理的に見れば寒冷な気候である。主な産業は、狩猟と織物。他にも寒さに強い作物を育てている。辺境と呼ばれるだけあって、人の往来は少なく、またモンスター等の脅威も治安の良い大陸南部に比べると、格段に大きい。当時の世界では“力無き種族”であった人々は、少数で身を寄せ合い、脅威に脅えながら暮らしていた。
 そんな辺境に、その村はあった。
 寒冷の気候ながらも、山間に在る地理条件にて短い夏も暑い。また、どういう訳か村周辺ではモンスターがあまり出現せず、耕地で育てた作物等の被害が最小限であった。山の実り、肥沃な土壌の恩恵を受け、貧しい辺境の中でも比較的裕福な村であった。
 その村の名は『オリエンゲヴィル』――『東の山地』。
 村は、短く暑い夏を迎えていた……。

「あーもう。こう暑くっちゃ眠れないよ」
 悪態をつき、少年はベッドの上で上半身を起こした。気だるそうに身体に吹き出た汗を拭う。歳相応のあどけない容貌の中、力強い意思が感じられる蒼灰色の瞳は、夜の闇の中でも爛々と輝いていた。
 イスカンダール、八歳である。
「……ん~……よし。こんな日は、あそこに行くに限るな」
 どこか悪戯っぽい笑みを浮かべて、独り頷く。
 一度物事を決めると、イスカンダールの行動は早い。すぐさま汗に濡れた寝巻きから普段着に着替え、どたどたと急な階段を駆け下りて行く。寒冷な気候であるこの地方では、冬になると雪が多く降る。その為、雪が屋根に積もりにくくなる様屋根の角度を急にし、家そのものを高くする場合が多い。イスカンダールの家も同様で、三階建てになっており、彼の部屋はその一番上の三階――と言うより屋根裏部屋――にあるのだった。
「……イスカンダール? もう、こんな夜中にうるさくしないの…… ただでさえ暑くて寝苦しいんだから……」
 寝室から母親の眠たそうな声が聞こえてくる。
「あ~ごめんなさい。ちょっと“森”に行って来る!」
 そう言うと、イスカンダールは元気よくドアを開けて屋外へと出た。
「行ってらっしゃ……」
 イスカンダールの返事を聞いてか聞かずか、彼の母親は最後まで言葉を発せず静かになった。どうやら再び眠りに落ちたらしい。
 外に出ると、山間から吹く風が身体を通り抜けた。汗ばんだ身体が冷やされ、気だるい気分が少し和らぐ。その山間に目を向けると、赤く大きな月が山際から昇った所だった。
「今日は“赤の日”……か……」
 赤い月を見上げ、イスカンダールは呟く。
 赤い月――その名は『エローゼ』。その炎の様な鮮やかな赤い色をしている所から、『赤きエローゼ』と呼ばれる。この世界に存在する二つの月の一つである。
 二つの月、もう一つの名は『ラズリア』。エローゼと対照的に、こちらは海の如き青い色をしている所から、『青きラズリア』と呼ばれる。
 二つの月は三十日周期でこの世界を回っており、夜空に現れる時刻がその日によって違う。この夜の様にエローゼのみが夜空に現れる日を“赤の日”、逆にラズリアのみが現れる日を“青の日”、双方の月が現れる日を“双の日”と呼んでいた。
「よしっ」
 視線を西に向け、左手にエローゼを見ながら、イスカンダールは駆け出した。
 エローゼの発する紅い光を頼りに、西へと進んで行く。
 しばらく進むと、小高い丘に辿り着いた。この辺りは耕地も無く、かと言って山菜や野草が採れる訳でも無いので、村人があまり近付かない場所である。この丘を下った場所に小さな森があった。
 イスカンダールは少しの躊躇も見せず、その森の中へと入って行く。森の中に入るとエローゼの光が木々に遮断され、ほとんど何も見えなくなった。そんな中をイスカンダールは迷う事無く、奥へ奥へと進んで行く。
 歩数にして、五、六百歩程進んだ頃か、闇の中に、微かに紅い光が差し込むのが見えた。逸る気持ちを抑えられぬまま、イスカンダールは歩を速める。
 そこには一面に、色とりどりの花が季節を問わず咲き乱れていた。寒冷な地方にも関わらず、一年中花が咲き、更には遙か南の温暖な地方でしか咲かない花までもが咲いているのである。
 ここがイスカンダールの目的の場所の“森”だった。いつでも花が咲いている、不思議な場所。そして、イスカンダールだけの秘密の場所。
 当然、「何故ここは年中花が咲いているのか?」と言う“疑問”が沸き上がるのだが、それはイスカンダールにとってはどうでも良い事であった。そんな“疑問”よりも、「一年中花が咲いている」という“事実”が重要だった。
 花達は、エローゼの光を受け、紅く鮮やかに彩られていた。
 月光――特に“双の日”の夜に蒼紅の月の光に花々に照らされる姿は、神秘的――と言うか幻想的な美しさで、イスカンダールはこれより美しい光景を今まで見た事が無かった。
 「花が好き」と言うと、村の同年代の男の子からは「女みたいだ」とからかわれる対象なのだが、イスカンダールは別に気にしていなかった。
(あいつ等は月の光に照らされた花の美しさを知らないから……。一度でもあの光景を見れば、きっと考えが変わるはずだ)
 そう確信していたのである。
 しかしここは、村の誰も、ましてや家族さえも知らない、イスカンダールの秘密の場所である。更に、今の所はここの事は誰にも教えるつもりは無い。従って、村の男の子達がイスカンダールと同じ思いをするのは無いと思われた。
 森の木々の間からエローゼの紅い光が差し込んでいる。月光に紅く彩られた花達は、まさに“幻想的”と呼ぶに相応しい美しさだった。
(今日は赤の月しか出てないんだよな)
 花に近づきながら、イスカンダールはそう考える。
 『赤きエローゼ』と対をなす、もう一つの月『青きラゼリア』。
 どちらかだけの場合でもココの光景は美しいが、やはり二つの月が同時に出ている時が一番美しいと思う。エローゼの紅い光、ラゼリアの蒼い光、そして二つの光が重なった淡い紫の光……。三つの光が花達を照らすと、幻想的な度合いが更に増し、何というか神々しささえ感じられる。
(赤の月だけでも綺麗なんだけどね)
 自分だけの秘密の場所。しばし時を忘れ、イスカンダールはその光景を眺めた。

 ――東の中腹にあったエローゼが天頂に差し掛かる頃……。
(そろそろ帰らないとな)
 斜めに差し込んでいた月の光が、真上から差し込んでいる事に気付き、イスカンダールは帰る事にした。家の者にも内緒でココまで来ている為、知られたらこっぴどく叱られるに違いない。
(でも……何だかこのまま帰るのも勿体ないなぁ……)
 いつもはこのまま帰るのだが、この日は何故か花を持ち帰りたい気分になった。この光景を壊してしまいそうで、花を摘む事は避けてきたのだが――
(うん、たまには良いよね?)
 そう自分を納得させ、イスカンダールは一つの花に手を掛ける。少し力を込めると、花はあっさりと引き抜かれた。
 イスカンダールが摘んだのは、鳥が羽ばたく様な形状を持つ黄色い花。数ある花の中で、イスカンダールが一番好きな花。

 『ストレリチア』――またの名を『極楽鳥花』。

 本来ならもっと南の温暖な場所で咲く花。イスカンダールが目にする事が滅多に出来ない筈であろう花。しかし、地熱等の影響からか、寒冷なこの地方でも、この場所のみで奇跡的に咲いていた。
(この花の花言葉は、確か……)
 イスカンダールが花言葉を思い出そうとした、その時だった。
 ――っ?!
 悪寒が背筋を駆け抜ける。同時に、吐き気をもよおすほどの不快な感覚が全身を支配した。
(何……この感じ……)

 どぉぉんんん!!!!!

 突如、爆発音と共に、大地が揺れた。
 何事かと思い、辺りを見回す。丘の麓の方で、紅い光が見えた。
(あれは、村の方角だ!)
 嫌な予感が頭をよぎり、イスカンダールは駆け出す。
 手にストレリチアを握ったまま……。
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